肥満症外来について
糖尿病内科│主任部長 辻英之医師
20歳以上の日本人のうち男性の約30%、女性の約20%が肥満です。BMI(現在の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が25以上であれば肥満となります。肥満そのものは病気でないのですが、下記の表1のように肥満関連合併症を併発している場合、または内臓脂肪面積が100㎠を越えた場合を肥満症と定義します。
内臓脂肪面積100㎠以上は腹囲が男性ならば85㎝以上、女性ならば90㎝以上となります。
内臓脂肪面積100㎠以上は腹囲が男性ならば85㎝以上、女性ならば90㎝以上となります。
表1 肥満に関連する合併症
|
肥満解消に近道はある?
脂肪体重1kg 減らすのには7000キロカロリーを消費する必要がありますから、断食だけで1kg体重を減らそうと思えば、2100キロカロリー/日食べてよい人は3日以上断食しなければならない、ということになります。1kgぐらいのダイエットなんかお茶の子さいさい!と思っている人もたくさんいると思いますが、本当はとても困難だということがわかっていただけましたでしょうか。
肥満を解消するのに近道はありません。食事・運動療法が大切になってきますが、まず食事療法の上では、脂質、単純糖質の摂り過ぎの是正が大切です。よく噛んで食べることも大切になってきます。人によっては、管理栄養士による栄養指導を受け、食習慣の問題を正したり、正しい食事療法のコツを学んだりする必要があります。
運動療法を学ぶチャンスは現在の病院の仕組みのうえでは少ないのですが、整形外科的、循環器内科的に問題がない人は、毎日8000歩以上を目標に歩いてみたり、隙間時間で筋トレやエアロバイクを漕いでみるということを続けていく必要があります。
肥満を解消するのに近道はありません。食事・運動療法が大切になってきますが、まず食事療法の上では、脂質、単純糖質の摂り過ぎの是正が大切です。よく噛んで食べることも大切になってきます。人によっては、管理栄養士による栄養指導を受け、食習慣の問題を正したり、正しい食事療法のコツを学んだりする必要があります。
運動療法を学ぶチャンスは現在の病院の仕組みのうえでは少ないのですが、整形外科的、循環器内科的に問題がない人は、毎日8000歩以上を目標に歩いてみたり、隙間時間で筋トレやエアロバイクを漕いでみるということを続けていく必要があります。
タイプ別アドバイス あなたはどのタイプ?
肥満解消、諦めていた方への朗報!
そういった減量がうまくいっているかどうかを可視化するために、グラフ化体重日誌といって、毎日、2回以上体重計にのって、体重をグラフに書いて記録する、といったこともコツコツ続ける必要があります。減量は野球やサッカーの試合と一緒で、勝ち続けることも負け続けることもありません。日々の体重を淡々と記録し、体重に興味を持ち続けることがとても大切です。毎日記録を続け、月に0.5kgでも1㎏でも減らし続ける、もし、毎月1kgずつ体重が減っていったならば年間12kg も痩せている!わけです。すごいことと思いませんか!そしてそれを継続し続け、健康を取り戻した体重を維持し続けるといったことが肥満症に苦しむ人たちにはこれまで本当に困難なことであったのです。
マツダ病院糖尿病内科では2008年の開設以後、肥満症の治療に取り組んできて、現在では県下で唯一の日本肥満学会認定肥満症専門病院を取得しています(中国地方では岡山大学病院と当院のみです)。とはいえ、実際に行うことが出来るのは30日以上の1000キロカロリー食を入院の上続ける、低カロリーダイエット療法入院や、3か月限定で使用可能なマジンドールを用いた外来減量治療が主体でありました。
そんな肥満症治療にも新しい風が吹き始めました。これまで何度も減量に失敗した患者さんも食事・運動療法を継続したうえで薬物療法を継続すれば肥満の改善が得られるかもしれません。
マツダ病院糖尿病内科では2008年の開設以後、肥満症の治療に取り組んできて、現在では県下で唯一の日本肥満学会認定肥満症専門病院を取得しています(中国地方では岡山大学病院と当院のみです)。とはいえ、実際に行うことが出来るのは30日以上の1000キロカロリー食を入院の上続ける、低カロリーダイエット療法入院や、3か月限定で使用可能なマジンドールを用いた外来減量治療が主体でありました。
そんな肥満症治療にも新しい風が吹き始めました。これまで何度も減量に失敗した患者さんも食事・運動療法を継続したうえで薬物療法を継続すれば肥満の改善が得られるかもしれません。
【A】肥満症に該当する患者
高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症をいずれかを持ち、(1) BMI 35以上の高度肥満者、(2) BMI27以上35未満であっても他に前述④~⑪の肥満関連合併症を1つ以上持っている肥満症患者さんは、抗肥満薬「ウゴービ®」の適応になります。
「ウゴービ®」は糖尿病治療薬として用いられているセマグルチドの容量を、最大で2.4倍に増やしたもので、食欲を減退させることによって肥満を解消します。副作用としては効果の裏返しでありますが、食欲不振、悪心、嘔吐などが知られています。最大容量2.4mg までは、0.25、0.5、1.0、1.7㎎と1か月ずつ増量させていき、2.4mg になってから52週の継続投与が可能です。漸増期12週を加えた2.4mg 68週後に平均で100kg の体重が85kg まで減少したと報告されています。
「ウゴービ®」は2024年2月に発売されましたが、美容クリニック、インターネットクリニックなどでの安易な投与が危惧されたため、厚生労働省より厳しい保険適応基準が課されています。まずは認可された施設であらかじめの栄養指導をはじめとする生活指導を6か月以上(2か月ごとの栄養指導も必須)、投与開始後も食事・運動療法を適切に継続しながら2か月ごとに栄養指導を受けることが必須となっています。
マツダ病院糖尿病内科では県下他病院に先駆け、「ウゴービ®」の保険治療を開始できることとなりました。前述の通り、厳格な食事・運動療法を必須としますが、初めて1年以上継続することが可能な抗肥満薬がわが国でも手に入ることが出来たことは大変画期的で、これまで肥満症とその合併症に苦しんできた患者さんにとっては大きな福音となります。とは言え、再投与可能ではあるものの、投与終了後のリバウンドも知られており、この治療を始める方は治療を機会に大幅に生活習慣を見直し、減量を得た体を維持していく不断の努力が必要となってきます。
「ウゴービ®」は2024年2月に発売されましたが、美容クリニック、インターネットクリニックなどでの安易な投与が危惧されたため、厚生労働省より厳しい保険適応基準が課されています。まずは認可された施設であらかじめの栄養指導をはじめとする生活指導を6か月以上(2か月ごとの栄養指導も必須)、投与開始後も食事・運動療法を適切に継続しながら2か月ごとに栄養指導を受けることが必須となっています。
マツダ病院糖尿病内科では県下他病院に先駆け、「ウゴービ®」の保険治療を開始できることとなりました。前述の通り、厳格な食事・運動療法を必須としますが、初めて1年以上継続することが可能な抗肥満薬がわが国でも手に入ることが出来たことは大変画期的で、これまで肥満症とその合併症に苦しんできた患者さんにとっては大きな福音となります。とは言え、再投与可能ではあるものの、投与終了後のリバウンドも知られており、この治療を始める方は治療を機会に大幅に生活習慣を見直し、減量を得た体を維持していく不断の努力が必要となってきます。
【B】健康な肥満患者
(BMI25以上35未満:腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)
肥満症には当てはまらないが肥満があるという方は、薬剤師のいる薬局で「アライ®」というお薬(18カプセル(6日分)2530円、90カプセル(30日分)8800円)を購入することが出来ます。「ウゴービ®」とは逆に肥満関連合併症を持っている肥満者はこの薬の適応となりません。
「アライ®」は以前から海外で販売されていたのですが、2024年4月から日本に導入されたもので、当院のような病院やクリニックでは処方することが出来ません。リパーゼ阻害薬といって食べた脂肪の1/4を便から排泄する機能を持っており、腹囲の正常化をはかります。副次的に体重の減少も得られます。
海外では古くから用いられており安全性は高いのですが、腹痛や下痢といった副作用の他に放屁時に油や便を失禁する可能性があるということが知られています。薬剤師の管理下で食事・運動療法を継続し、生活記録シートを記載しながら服薬を継続していく必要があります。
海外では古くから用いられており安全性は高いのですが、腹痛や下痢といった副作用の他に放屁時に油や便を失禁する可能性があるということが知られています。薬剤師の管理下で食事・運動療法を継続し、生活記録シートを記載しながら服薬を継続していく必要があります。
【C】糖尿病合併の肥満症患者
糖尿病を合併している肥満症患者さんで、病態が適している場合は、「ウゴービ®」と同様のセマグルチド製剤である「オゼンピック®」やその経口薬である「リベルサス」、また、「ビクトーザ®」といったGLP-1受容体作動薬を保険適応下で用いることもできます。
また、大きな減量効果が期待できるGLP-1/GIP受容体作動薬である「マンジャロ®」も外来治療で用いることが出来るようになりました。
また、尿糖排泄により糖尿病を改善させるSGLT-2阻害薬もGLP-1受容体作動薬ほどではありませんが減量が期待できることが知られています。どういった治療薬が自分に合っているかは内科各科、または糖尿病内科医師に尋ねてみて下さい。
また、大きな減量効果が期待できるGLP-1/GIP受容体作動薬である「マンジャロ®」も外来治療で用いることが出来るようになりました。
また、尿糖排泄により糖尿病を改善させるSGLT-2阻害薬もGLP-1受容体作動薬ほどではありませんが減量が期待できることが知られています。どういった治療薬が自分に合っているかは内科各科、または糖尿病内科医師に尋ねてみて下さい。
【さいごに】専門家に相談をしましょう
最後に強調しておきたいのは、肥満症がすでに病気であること、そして肥満に至っていることは本人の責任でもなんでもないことです。とはいえ、減量した健康な体を維持するためには、太りやすい体質の人は継続する食事・運動療法がどうしてもかかせないといったことです。このような素晴らしい薬がたくさん上市され、我々専門家もそれを駆使して減量の達成を御手伝いしますが、一番大切なことは患者さん本人が健康を希求し、改善した生活習慣、体重測定などを継続し続けることだと考えています。一緒に頑張っていきましょう。